2012年04月28日
うどん県のB級グルメ「ぴっぴ飯」

うどん県内ナンバーワンのB級グルメは、香川県坂出市の「ぴっぴ飯」です。
ぴっぴ、とは、赤ちゃん言葉で、うどんのことです。大昔から、うどん県の離乳食はうどんなのですが、物心つくかつかない頃の子供達は、うどんのことを「おぴっぴ」と呼んでいます。
そして、「ぴっぴ飯」というのは、香川県坂出市で昔から根づいていた、家の残り物をフライパンで炒めて簡単に作れる日常的な食べ物だったのです。
作り方は非常に簡単で、豚肉、たくあん、冷蔵庫の残り物の野菜、ご飯、讃岐うどんの残り物を炒めて、うどんのイリコだしをかけて、まるでかけうどんのように、天かすをトッピングして出来上がる、うどん県ならではのチャーハンです。
もちろん具材は、どのようにアレンジしてもいいのですが、ちゃんとしたこしの讃岐うどん、ご飯、イリコだし、と、たくあん、は必須なのです。
たくあんを炒めることに抵抗のある人もいらっしゃるでしょうけど、たくあんが入ることによって、「ぴっぴ飯」は「ぴっぴ飯」らしい、ほのぼのとしたうどん県の家庭の味になるのです。
香川県多度津町には、「鍋ホルうどん」というB級グルメがありますが、これは、ホルモン鍋の最後のしめのうどんを入れた状態のうどん、のことです。こちらももちろん美味しいのですが、私は、やはり、昔から香川県内の家庭料理として根づいている「ぴっぴ飯」、たくあんが加わる「ぴっぴ飯」が、香川県内のB級グルメとしてはナンバーワンだろうと確信しています。
ところで、他県の皆様は、香川県のB級グルメは「讃岐うどん」だろうと思っていらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。香川県は降雨量が少なくお米が凶作になることが多かったのでうどんを主食にして来たことを考えると、讃岐うどんは文化なのです。
ですから、香川県内のいろいろなB級グルメにも必ずうどんが関わってくるのですね。
ちなみに、うどん県でうどんが文化になっていることは、うどん県の学校給食は、週に2~3回は、うどんが入ることや、早朝の朝うどんを毎日食べに行く習慣を見れば明らかですね。
掲載写真は、坂出市のJR坂出駅北口を降りてすぐの、土佐料理居酒屋「明神」の『ぴっぴ飯』〔味噌汁と天かす付き〕(500円)です。
土佐料理専門店にも、うどん県では、讃岐うどんを使った『ぴっぴ飯』が常設されていますし、この近所も、うどん店だらけなのです。
しかも、中讃地域は、高松市内のように支店などは多くないうえに、中央商店街は、イオンなどの大型店舗に見事に制覇されて壊滅状態なので、どこが商店地域なのか明確でないため、美味しいうどん店は、住宅街のど真ん中にあって看板も出ていませんので、高松市民の私でさえ、高松高校時代の同窓生に、「あんたの家の近所の美味しいうどん屋さん教えてーたー。」と、讃岐弁で聞かないとわからないのです(笑)。
こんな時、「おそれいりますが、あなたのご自宅のご近所のおいしいうどん屋さんを、ご教示下さい。」なんて共通語の敬語で聞くと、「岡田君、何を共通語でえらっそげに言いよんな。」と返ってきて、教えてくれないのです。
この応答が共通語ならば、「岡田君、君は、共通語でなんて偉そうな言い方をしているんだ。」となりますので、喧嘩になりますが、讃岐弁ならば、「偉そうな」が、「えらっそげに」となりますので、絶対に喧嘩にはならないのです。この場合の讃岐弁の特徴的なことは、「えらっそ」と、弾んだスタイルになることなのです。
言葉が弾むと思わずウキウキして、喧嘩にはならないのです。讃岐弁の特徴の一つに、弾ませる言葉遣いがあります。ちょっと例を上げても、
ものすごく=ものっそ
全く同じ=まっつい、あるいは、まっつくつい
また、同様の喧嘩をさける言い方が、同意を示す時の言い回しのアクセントと何の意味もなく語尾を伸ばすことで、東讃では「・・・・やのうーーー」の『の』、西讃では「・・・・やなあーーー」の『な』、にアクセントがつき、語尾を伸ばすことです。このように語尾を伸ばされると、時間が経過しますので、相手は、のーーーんびりした気分になるので、喧嘩方面への意識はなくなります。
このように書くと、すごくいい讃岐弁の部分もあるのですが、同様に、高松市内に多い、一方通行の道を間違えて逆送していた時に周りから注意された時、他県ならば、「気がつかずに申し訳ございませんでした。」と言うのですが、うどん県では、「ごめんのうーーー。」と、伸ばして相手をゆったりさせた後に、「ほんだけど、そんながいげに言わんでも、かまんでないんな。」と、かまわないのかかまわなくないのか明確でない回答をすることに慣れているので、交通事故が多いようです。
こういう讃岐弁の持つ、独特の平和でのーーーんびりした気分にぴったりなのが、「ぴっぴ飯」の中に入っている、たくあんの風味なのです。
私は、「ぴっぴ飯」をいただいている時、たくあんの風味が口の中で広がるたびに、懐かしい懐かしい気分になるのです。
ところで、坂本龍馬の名言と言われている、「日本の夜明けは近いぜよ」は、土佐弁だから意味が通るのです。これを讃岐弁にしたら大変なことになるのですよ。
「日本の夜明けは近いぜよ」の讃岐弁バージョンは、「日本の夜明けは近げなでぇーーー。」となりますから、「・・・げな」がついているので、夜明けが近いのか近くないのか全然不確かですし、うどん県においては、電気のなかった平安時代から、ずっと、「夜明け」=「製麺所の開店時間」と認識されていましたので、「日本の夜明けは近いぜよ。」という発言に対して、うどん県民は、「日本中のうどん製麺所が開店してものう、わしは、うちの近所の製麺所に夜明け前から食べに行くけん、それでどんな具合になるんな。」と返ってくるに決まっていますから、日本国は全然変わらなかったと思いますね。
ところで、高松市内に、「ぴっぴ飯」を家庭では作っているにもかかわらず、それを提供している飲食店が皆無なのは、高松市民が見栄っ張りなので、こんなものを飲食店で提供することは、「ふうが悪い」(格好悪い、という意味の讃岐弁)、と確信しているからなのです。
また、第二次世界大戦の時、B29がやって来て爆弾を投下したのが、戦前からあった三越高松店近辺の高松市中心部だった上に、終戦後、アメリカからやって来た進駐軍のGHQの四国本部を、三越高松店に置いたことから、高松市内の中心部に住んでいた皆様は、その見栄をいっそう強めた結果、高松市中心部以外の土地を、全て、一括して、「ものっそ田舎のたんぼの真ん中」と呼ぶようになりました。もちろん、この文言の中の『ものっそ』は、弾んでいるのですが、この会話は、高松市内中心部在住の皆様の間での『ものっそ』ですので、高松市内中心部在住の皆様同士は喧嘩をしないような言葉遣いとして使われたのです。
ですから、この先の、坂出市の、『ぴっぴ飯』をテイクアウトできる、全ての飲食店は、テイクアウトの時、ビニール袋に入れたものを、大量購入した、三越の包み紙で包んで渡せば、高松方面からの来店客の来店リピート率は絶対に上がると思いますよ。
最後に、道州制導入の前に、一番大切なことは、四国内のそれぞれの地域の方言を、学校教育の国語の授業でとりあげて、勉強しておくことだと、私は、確信しています。英語教育が盛んになっている昨今ですから、方言を外国語のように認識して勉強しておけば、道州制への移行は、きわめてスムーズにゆくと思います。
讃岐うどんが、香川県出身の弘法大師によって1200年前に始められた、貴重な文化を、今後、生かすにあたって、一番大切なことは、食文化と不可分の方言文化ですから、香川県民は、全員、一致団結して、方言を大切にしたいですね。
その結果うまくゆかなかった時、東京や関西方面から、いろいろなご意見を持ったマスコミ関係者、ニュースキャスター、コメンテータがやってきて、いろいろな文句を言われたなら、讃岐弁の「ほーなー」「ほーなー」と、相手が言い終わるまで聞くふりをして聞き流す言葉で、時間をとったあと、「そんながいげに言うわんでもかまんでないんなーーーーー。」と、たっぷり時間を経過させてから、「この近所に、うまーげなうどんを食べられる、製麺所があるけん、一緒に食べに行かんなあーーー。」と言って連れて行けばいいのです。
そして、続いて、「ミシュランの三ツ星公園の、ここもうまーげな『栗林公園』も散策しまーせー。」と言って連れて行けば、完璧でしょう。
というのも、全ての形容詞に、「・・・げな」がついていますので、責任は回避できるのです(笑)。