2012年02月16日
北海道教育大学の若者達との出会い

若いっていいなあ。
私は、一昨日、改めてそのことを痛感しました。
一昨日の昼、高松市丸亀町商店街の「明石家」で、肉うどんなどをいただいていた時のことでした。
若い女性二人と若い男性一人の三人連れが入ってきました。
こればかりは、うどん県(笑)で生まれ育った私は直感的にわかるのですが、セルフサービス讃岐うどん店に入るのは、初めての人たちだと思いました。
いろいろ迷っているようだったので、「明石家」は、鳴門ワカメとお新香が無料で取り放題だったので、これは、ネギ、天かす、と共にタダだから、ということをご案内して差し上げたのが、最初の会話でした。
三人は、「本当ですか。こんなに安いのに、これ以上載せたら、大変だ。」などと、大騒ぎしていましたが、肉温泉卵ぶっかけうどんに、ぼくがお勧めした、『半熟ゆで卵の天麩羅』は、全国的に有名になっているトッピングだったので、既に、とっていましたが、いろいろ載せて、奥の席で、食べだしていました。
「明石家」は、飲料水をとる場所が入り口にあるのですが、奥に、暖かいほうじ茶があって、初めて行った人はわからないことが多いので、温かいお茶がよければ、ここにほうじ茶があること、入り口のところで売っているポッカの缶コーヒーやジュースが全て50円なので、それもご案内しましたら、びっくりされていました。
「だから、高松では、ローソンやファミマでは誰も缶コーヒーなんかは買わないんだよ。120円もするなんて、高すぎるからね。」と私が言ったことで、三人の金銭感覚は、完全に、讃岐うどんバージョンになったようでした(笑)。
まず、男性の若者から私に質問がありました。
「俺達、どこから来たと思います。」
「東京じゃないのかな。」
「ブーーーッ、違います。北海道です。」
「マジ。旅費がだいぶかかったでしょう。その分を取り戻すには、高松で安くて美味しいうどんをたくさん食べないといけないね。」
などなどお話しているうちに、私は食べ終わりました。すると、女性の一人が、三人がけの奥の席の一つを空けて、「どうぞこちらにいらして下さい。」とおっしゃるので、私は別に用事もすんでいたので、そこに座りました。
「ご存知だと思いますけど、香川県は、うどんだけじゃないんですよ。『一鶴』というお店の『骨付き鶏』、『大西食品』の『醤油豆』、『松風庵かねすえ』の『から芋きんとき』という、サツマイモだけを使った、きんつば、いろいろと、美味しいものがありますから、いらっしゃるうちに、召し上がってくださいね。」
「『一鶴』の骨付き鶏は、夕食にいただくつもりです。」
「素晴らしいですね。いろいろ調べていらっしゃったんですね。『一鶴』の高松支店は、この丸亀町商店街の路地を入ったところにありますから。うどんを食べるためだけに高松にいらっしゃったのじゃないんですね。」
すると、びっくりする回答が返ってきたのです。
「俺達は、函館にある、北海道教育大学の三回生で、都市開発を専攻しています。今、研究課題の、町の中心にある商店街の空洞化を避けるために、どうすればいいかという課題を研究しているのですが、香川県高松市丸亀町商店街が、日本全国の地方都市で成功している唯一の場所なので、視察に来たのです。」
とのことでしたので、私は即答しました。「ああ、そうですか。でしたら、隣の新生銀行の上に、『丸亀町商店街振興組合』の事務所があるから、そこに行けばいいですよ。」
「今、行って来たところです。」
「で、誰に会ったの。」
「Kさんという方です。」
「ちゃんと教えてくれた。」
「はい。ご親切に、資料もたくさんいただきました。」
「理事長の古川君、あっ、彼は、ぼくの小学校からの同窓生なんだけど、彼には会ったの。」
「いえ、理事長様のことは存じませんでしたけど・・・・・。」
「そっか。古川君は、今、全国の商店街から丸亀町商店街がTVで取り上げられたりして、忙しいからアポイントを入れないと会えないと思うから仕方ないけど、じゃあ、前の理事長の鹿庭(かにわ)さん、か、鹿庭さんの息子さんにはあった方がいいね。丸亀町商店街が成功したのは、将来の見通しを早く見つけることに成功したからなんだよ。バブルに入って、日本中が大喜びしていた当時に、この表通りから少し入ったところにある八百屋さんが、客が減ったから、という理由で閉店したことに、当時理事長をしていた鹿庭さんと、ここ明石家の、明石さんが商店街の将来をなんとかしなくちゃいけない、と直感して、手を打ち始めたんだよね。大型店舗の、高松夢タウン、イオン、が開店するはるか前だったから、よかったんだよ。」
「えーーーっ、そんなに昔から取り組んでいたのですか。」
「じゃあ、詳しい話は聞いていないんだね。まあ、全国から視察団がやってくるから、細かなことは案内していないんだろうけど、この丸亀町商店街は、江戸時代からある商店街なんだから、最初は、再開発に取り組んで、町全体が動き出すまでが大変だったとぼくは思うんだよ。そのとき一番問題になったことは、少子高齢化の時代が迫っていること、高齢者が増えたら、運転も出来なくなるから、近場で全てそろうようにしたい、というニーズが出てくることに対応した時、当時の丸亀町商店街は、三越高松店のすぐそばで一番ブランドが高かったため、ほとんど全ての店が、衣料品のブランドを扱うところだったんだ。この、明石家だって、当時は、『ライオン屋靴店』という高級靴店だったんだよ。斜め向かいの鯛焼き屋さんだって、以前は、宝石店だったんだ。でも、衣食住のバランスの整った商店街を作ることに成功したから、アーケードの両側が高層マンションになっているんだけど、今、このマンションに住みたい人が山のようにいて、人口が増えているんだ。マンションの並びには、病院も出来たから、郊外の高齢者は、みんなここに住みたいと思っているんだよ。だって、エレベーターを降りたら何でもそろう、という住環境は素晴らしいからね。」
「たしかにそうですよね。でも、そんな商売換えしてまで、って信じられないですけど。」
「いやいや、それくらいの覚悟をして取り組まないといけないでしょう。町全体でイオンや夢タウンよりも魅力のある場所にしないと、人は集まらないでしょう。明石さんがいらっしゃれば、説明してくれると思うけど、さっき、店長さんにお聞きしたけど、今日はいないから、でも、この商店街は、ぼくの自宅からも近く、学校区も一緒だったから、友人、知人が何人かいるから、ご案内、ご紹介しますよ。」
「いいんですか。」
「いいよ。だって、北海道からいらっしゃったんでしょう。ちゃんと情報は持って帰らないと、無駄になるでしょうから。ああ、ぼくは、作曲家だから、OKだよ。」
・・・・・などなどお話して、私は、まず、彼らの作ったアンケートに答えたり、古川君のお店の『野田屋電気店』をご案内してから、散歩がてら、ご案内しました。
まずは、丸亀町商店街一の老舗の江戸時代から続く、和服小物店の『万珠堂』にご案内しました。ここは、私の祖母と母の行きつけ店でしたから、奥様がいらっしゃれば、OKだろうと思ってご案内しました。
大奥様がいらっしゃって、快く、彼らに説明をして下さいました。彼らが驚いていたのは、年明けうどんの大パレードのことでしたね。高松では「うどんの日」とならんで、年中行事になっているのですが、北海道の若者は、ただただ、驚いていました。
「えーーーっ。年越しそばを食べないだけでなく、年明けうどんまで食べるのですか。」
「紅白のうどんは、美味しいわよ。」
「紅白、って、赤いうどんがあるのですか。」
「ええ。梅干を練りこんで手打ちするうどんと、小麦だけのうどんよ。紅白でめでたくて、香りがいいのよ。」
続いて、同窓生の、岩佐君が社長をしている『岩佐仏喜堂』に行ったら、岩佐君はいなかったのですが、店員さんがすぐに連絡してくださり、電話で彼らに概略の説明をしてくださった上、私の亡き母とPTAでご一緒していたお母様と弟さんが出ていらして、北海道からいらした彼らに、お香のおみやげまで下さりました。
高松の地域コミュニティーは健在なので、彼らは、驚いていましたが、私は、ずいぶん、ほっとしました。
まあ、大地震や大津波が来たら、どうなるかわからないですけど、地域コミュニティーに基づく絆がしっかり残っている状況にあるので、やっぱり、高松は素晴らしい町だと、再確認出来ましたから。
最後に、彼ら三人の要望で、岩佐君の弟さんと、私を含めた五人で写真を撮って下さり、お別れしました。
「でも寒いですね。四国は暖かいと思っていましたのに。」
「本当に変な天候ですね。大地震が来る予兆かな。」
「今日は本当にお忙しいところ、有難うございました。」
「いやいや、忙しかったら、出来ませんよ。」(笑)
「このあとご予定は大丈夫ですか。」
「はい。大丈夫ですよ。今から、兵庫町商店街の『こんぴらや』の『冷たいかけうどん』を食べに行くだけですから。」
「えーーーっ。またうどんを召し上がるんですか。」
「3時のおやつですよ。『こんぴらや』のうどんは、『明石家』より細い手切り麺で、ちょっとこしが強いので、冷たいほうが美味しいとぼくは感じているんですよ。」
「おやつもうどんですか。」
「昔からそうなんだけど、高松人どうしは、喫茶店で待ち合わせしないです。うどん屋ですよ。だって、ケーキセットより冷たいかけうどんの方が安くて美味しいからね。甘いものが食べたいなら、『うどんかりんとう』もあるから、大丈夫だよ。」
「すごい。」
「香川県の名前は、うどん県になっちゃったみたいだし、名前が変わる以前の1200年前から、ずっとうどん食べてましたからね。でも、一番美味しいうどんは、朝のうどんですよ。出来立てが一番美味しいからね。」
「朝、って。」
「日の出です。電気がなかった頃から、ずっと、うどん食べてますから、製麺所は、日の出が開店時間なんですよ。明日の朝でも、すぐ近所の香川県庁の裏に、『さか枝』という讃岐うどん店がありますけど、朝5時半には開いていますよ、っていうか、朝5時半には、住民がお店の入り口で並んで待っていますから、行かれたらすぐにわかりますよ。」
「まじですか。」
「まじです。」(爆)
彼らは、全員、21歳でした。ということは、私の半分も生きていないのです。が、しっかりした若者達でした。そうでなかったら、初対面の私がここまで協力はしていないと思います。
思い起こすにつけ、彼らが、私のハートをわしづかみにしたのは、「明石家」での、次の一節でしたね。
「俺達、どこから来たと思います。」
「東京じゃないのかな。」
「ブーーーッ、違います。北海道です。」
このようなお茶目な応対が出来るのは、学生だからなのですが、あのタイミングで私にぶつけてきた若者のセンスは、素晴らしいですね。彼は、いきなり、飛び込み営業をしても、大丈夫ですね。
こういう、素晴らしい若者がいっぱい育ってくれれば、日本の将来も安心ですね。
以上、アンチオタクにやっている私は、久々に、楽しい高松のご案内が出来たことを、とても嬉しく感じています。
北海道函館の三人の皆様、どうも有難うございました。

掲載写真は、順に、彼らと出会った一昨日の昼、私が高松市丸亀町商店街の「明石家」でいただいた、『肉うどん・半熟ゆで卵載せ』、『チラシ寿司』と、『白身魚のフライ』、そして、彼らと別れた後、3時のおやつにいただいた、「こんぴらや・兵庫町支店」の、『冷たいかけうどん』、『練り物のタコ入りさつま揚げ』、です。