2011年05月19日
『てっぱい』

「克彦、わしの作った『鉄砲あえ』どうじゃ。」
「おじいちゃん。ものすごく美味しいで。ほんだけど、なんでこの食べ物『鉄砲あえ』いうんな。どこにも、鉄砲や入ってないのに。」
「どうして『鉄砲あえ』言うんかわしも知らんのじゃ。」
「そらいかんで。ちゃんと調べなんだら、お客さんに聞かれたらどなんするんな。」
「・・・・・」
「ボンは、また、おじいちゃんに屁理屈言うていじめよる。ごじゃごじゃ言わんと、しゃんしゃん食べまい。」
「竹井さんは知らんのな。」
「わしもよう知らんけど、たぶんの、鉄砲がヨーロッパからやって来た頃に出来た和え物で、みんなが『うまーげな和え物じゃ』言うて食べたけん、そうなったんとちゃうかいの。鉄砲はええもんやったけん、織田信長はあれで全国を統一したけんの。」
「ああ、そうやったんな。鉄砲くらい美味しいけん『鉄砲あえ』になったんな。」
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ぼくが小学校に入った頃、旅館を経営していた板前の祖父が作ってくれた「鉄砲あえ」を花板の竹井さんと一緒に食べて、ものすごく美味しかった時のことでした。
竹井さんは、おじいちゃんの弟子で、旅館の花板をしていました。が、この人の教えてくれたことは、大体、デタラメでした(笑)。
だって、竹井さんは、レタスのことをニューヨークと呼んでいましたので、どうしてなのか聞いたのですけど、外国から来たものは、全て、ニューヨークと呼んでいましたので・・・・・、ですから、ぼくは納得したわけではなく、あまりにも美味しかったので黙ったのでした(笑)。
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讃岐の郷土料理の代表の、『鉄砲あえ』『フナのてっぱい』をご紹介します。
この料理は、晩秋から冬にかけての讃岐を代表する郷土料理です。
『鉄砲あえ』と呼ばれていた理由は後日調べてわかりましたが、フナを使った料理だったためです。フナのことを鉄砲と呼んだことから『鉄砲あえ』という名がつき、それがなまって『てっぱい』となったのです。
『鉄砲あえ』は、もともと、フナやコイを三枚におろし、細く切って塩酢に漬け、数時間置いたものを白みそであえ、ダイコンやニンジンなどをまぜ合わせた和え物なのです。
農繁期が終わり、秋から冬にかけて溜池の水を抜いた後、「ふな」を捕って作ったもので、寒ぶなは臭みがなく脂がのっていて、大変おいしかったのです。溜池の多い香川県ならではの、たんぱく源を求めて出来た料理だといえます。
もちろん、その後、フナは入手困難になりましたので、代わりに「さば」や「このしろ」を使って作られています。祖父の作ってくれる『鉄砲あえ』には、「このしろ」が入っていました。
が、この「てっぱい」は、本当に美味しいです。ぼくは、毎年、冬が近づいてくると、香川県内のスーパーは、どこでも置いていますので、買っていただくようにしています。
また、高松市内のさぬきうどん店、割烹、定食屋も、秋口から、「てっぱい」を置いているところが多いので、この時期に香川県にいらっしゃったら、是非、お試しください。
以前ご紹介した、高松市のさぬきうどん店・『あわじ屋』〔香川県高松市丸の内7-34 087-821-6948 (平日)9:30~18:00 (土・日・祝)9:30~16:00 日曜日休み〔月一回不定〕〕の「てっぱい」はとても美味しいです。
日本酒には、素晴らしく合うのですよ。
掲載写真は、高松市の割烹でいただいた、「コノシロのてっぱい」、です。
Posted by 岡田克彦 at 21:37│Comments(0)
│讃岐の郷土料理